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第17回 ママのねオンライン勉強会開催報告と録画視聴のご案内 flower-icon

8月27日(土)、連続7回シリーズ:助産師としての信念に従うか、周りに流されるか
―海外の助産教育から考える≪この日本で助産師として生きる≫意味―

シリーズの最終回にあたる第17回目は江藤宏美さん(長崎大学 生命医科学域保健学系 教授)をゲストにお迎えし、「日本の助産教育」について勉強会を開催しました。

録画視聴ご希望の方はこちらからお申込みいただけます(9月末まで)。
https://sairokuga-mamanone17.peatix.com/

ファシリテーターは共同代表の日隈さんでした。

 ここまでニュージーランド、カナダ(ケベック州)、イギリスの助産師さん達のお話を聞いてきて、どなたからも自信に満ちた働きぶりが感じられました。そのベースには助産哲学や理念が明確になっていて、それが助産師さんの中に培われていて、実践に生かされているということを学びました。それでは日本の助産教育はどうだろうか?日本の助産教育はどうあったらいいのか?

日隈さんからは、「日本の助産教育がどうあったらいいのか?というのは皆んなで、つまりは助産師だけなくケアの受益者である女性の皆さんと共に考えより良いものに作り上げていくことだと思っております。本日の江藤さんのお話が、そのような開かれた助産教育の一歩になれば良いのではないかと思っております。」というメッセージがありました。

先ず「日本の助産教育」について、現状の課題や将来的な理想についても語って頂きました。

特に思い描かれる助産教育の中の、「女性や妊産婦との出会いの場を多くもつ」という提案には日隈さんのいう、「開かれた助産教育」に通じる未来を感じました。

その後日隈さんから江藤さんに、「海外の話を聞いていると助産師のやることは妊娠・出産・産後って明確じゃないですか。そこにどれだけ助産師は女性を中心にし、女性が親になる過程に集中することが助産師の職務範囲なんだということが非常に明確になっていると思ったんですけど、日本はどうだとお考えですか?」という投げかけがありました。

「日本は女性の一生に寄り添っていく職種、例えばお産をしない女性にも寄り添っていくことになるのかなあと思います。ただお産に関しては絶対手放しはいけないし、きっちり診て関係性を持っていかないといけないと思っています。その為には生理学的なものについては私たちが一番知っています!っていう自信が持てるぐらいの知識は持っておかないといけないんじゃないかなあ。」といったお答えを頂きました。

そこで女性の立場から共同代表の古宇田さんからは、

「今女性にとって助産師さんが見えてないんです。

『お産のとき居てくれたのが看護師なのか助産師なのかわからない。』

『助産師さんってどこにいるの?』

『助産師さんって何をしているの?』

っていうのが普通のお母さんの助産師さんのイメージなんですね。

そこにきて一生に寄り添うってよくわからなくて、今でさえお産の現場で助産師が見えていないのに、一生ってするとますます見えなくなってしまうと思うんですけど、なんでそうなるんでしょうか?」

というとても率直な疑問の投げかけがありました。

それを江藤さんは「おっしゃる通りです。」としっかりと受け止めてくださり、そこから先ず実習先で疑問に思ったことはちゃんと言えるようになることが大事など、議論はどんどん深まっていきました。

さらにカナダの助産教育の回でお話しくださった、大谷あきさんからは、

「日本の助産教育のレベルはとっても高いと思うんだけど、実践する場所が医師の元ということが問題だと思う。助産師が自律した専門職であれば、医師や同僚に対して言えることが必要なんだけど、言えないことが問題なんじゃないか。」

という発言がありました。

・なぜ「自分で考えること」「対等な関係でいること」が助産師として必要なのか
・この2つを日本の助産教育にどのように取り入れたらよいか
・日本の助産教育を受けた人でもこの2つを今からでも身に着けるためにはどうしたらよいか

7回のシリーズを通して、皆さんの中に「助産師として」「女性として」明るい日本の助産教育の未来が像が明確になり、形になっていくことを切に望みます。

ご参加された方の感想です(掲載可のもの)

・助産師養成過程で学んだことと、就職してからのお産の現場とのギャップ、そこで諦めてしまう助産師たち、この連鎖がずっと続かないようになんとかしたいと、改めて感じ、すごく刺激になりました。微力ですが自分自身も諦めずに頑張ろうと思える勉強会でした。
ありがとうございました。今回の勉強会は、日本の助産教育という側面から「助産とは」を考える良い機会になりました。

・私が30年以上前に助産教育を受けたのは、国立大学の医学部附属助産婦学校だったので、医師から講義を受けることも多く、医師の下で効率よく働く助産師として養成されたと改めて感じました。
そのように助産師になった人や、医師がヒエラルキーのトップにいる医療現場で働く助産師は、女性が尊重されてないケアや、それがおかしいと堂々と言えない自分にジレンマを感じ、苦しんでいるのが現状だと思います。
助産師がケアの対象者としての女性にとって大切なことを守れる立場であるために、専門職として医師と対等に話ができるように、助産師の育成に必要な部分はすでに江藤さんは私見としてお持ちであることを聞かせていただけてよかったです。ぜひとも、それを「私見」にとどめずに、教育の現場で進めていっていただけたらと思います。教育に携わる人も、一人の助産師です。これからも引き続き、女性のためにどうあるべきかを中心に考え、教育の充実・改革に取り組んでいただけたらと思います。
お忙しい中、どうもありがとうございました。

・大学は講義,実習,そして研究とかなり多忙な生活だと思います.その中で貴重なお話を伺うことができて,本当にありがとうございました.日本は,世界中で女性を中心としたケア,継続ケアが推奨されている中,日本はなかなか浸透していかない環境があります.その環境を変えていくためには,助産師教育だけでなく,臨床の場で協働している医師の教育も考えていく必要があると感じました.産婆からつづく助産師魂は決して揺るぐことはないと信じています.小さな炎も集まれば大きな炎,その炎は女性を照らすのだと思っています.これからも,引き続き勉強会の開催を強く希望します.

・助産師は分娩を手離してはいけないと改めて思いました。

◎登壇者プロフィール

ゲスト 江藤宏美さん(長崎大学 生命医科学域保健学系 教授)



長崎大学にて助産師免許取得後、大学病院に助産師として勤務。

聖路加看護大学(現:聖路加国際大学)にて修士課程・博士課程を修了ののち、10年間同大学で学部教育から大学院教育への助産教育の変遷時期に携わる。この間、家庭出産に携わり、助産師として目覚める。2012年より長崎に戻り、長崎大学での助産教育の大学院の立ち上げから関わり現在に至る。

日本助産評価機構