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第14回 ママのねオンライン勉強会開催報告と録画視聴のご案内 flower-icon

2022年7月8日(金)、連続7回シリーズ:助産師としての信念に従うか、周りに流されるか
―海外の助産教育から考える≪この日本で助産師として生きる≫意味―

4回目は「イギリスの助産教育」について、キャンベル淳子さん(イギリス ロンドン 助産師)

をゲストに開催しました。ファシリテーターは共同代表の古宇田さんです。

こちらから
https://sairokuga-mamanone14.peatix.com/
から録画をご視聴できます。(9月末まで)

冒頭、

「職場で、目の前で明らかに不必要だと思える医療介入がされている。でもそれについて上司や同僚に批判はもちろん、疑問を投げかけることすらできない。助産師として辛い。でもそんな職場を変えることなんてできない。」という声をよく聞きます。キャンベル淳子さんは日本でも助産師として働いた経験をお持ちです。そんな淳子さんはイギリスの助産教育を受けて、「視点が広がった。考え方が変わった。」そうです。今日のお話を聞いて、日本で助産師として働くみなさんの視点が広がるような変化があればと思っています。と古宇田さんの言葉で始まりました。

先ず淳子さんから、「イギリスの助産教育」について、詳細にまとめてくださったパワーポイントを使ってお話がありました。

(一部内容を紹介)

・NMC(看護・助産審議会)の役割やNMCが提唱する行動規範・職業倫理について

・助産師哲学「女性中心のケア、女性を中心に女性のためのケアをするのが助産師である」「助産師は女性を代弁(adovocate)する立場である。」というところから助産教育が始まる

・カリキュラムの6割は実習。それが助産師としての自信に繋がった

・Birthplace Study(2011)→この研究結果に基づいてイングランド全体で産科の75%にバースセンターのような場所が併設されるようになった

次に冒頭でも触れた、「イギリスの助産教育で初めて世の中や臨床について違った角度から考える視点を与えられた。」という授業について詳しくお話をうかがいました。

その授業を通して、「意識していない自分の価値観を見直すことができましたね。改めて自分は男性優位な社会で育ってきたんだと、生い立ちを振り返る機会にもなりました。皆がやっているからこういうもんなんだと思ってしまうか、そこでこれってどうなんだろう?と立ち止まる瞬間を持つっていう感じですかね。」と話してくださいました。

実習についても詳しくお話し頂きました。

実習は学生が自律してオーガナイズしないといけないそうです。担当の助産師からは評価を貰わないといけないので、「今日は〜がやりたいです。〜をチェックして欲しいです。」とまさに食らい付いていく感じだったそうです。

また日本の教育や現場ではあまり馴染みのない、「その時どう感じたか?」といった自分の気持ちを振り返るリフレクションについてもお聞きしました。

臨床で経験したことについて、出来事だけでなく、「どう感じたかを掘り下げることは、「間違ったことを反省したり、言えなかったことを責めたりするものではなく、自分でも気づいていなかった価値観や気持ちに気づくことでもあるので、そこから得るものはたくさんあると思います。」とお話しくださいました。

ローリスクの分娩は助産師主導で担っていることについてお話し頂きました。

出産の場面で、医師が必要か必要でないかの境界線がはっきりしているといいます。助産師は最初のプライマリケアーを担う役割があり、医師だけでなくその他の専門職に繋げるのも助産師の役割であるということがはっきりしているとのことでした。

ガイドラインの捉え方についてもお聞きしました。

ガイドラインはあくまでガイドラインであって、どうするかを決めるのは女性であるという考え方だと言います。

共同代表の日隈さんからは、日本で助産師として働いていた時の淳子さんと今ではどういったところが違うか質問がありました。

 イギリスで「女性中心のケア」という哲学を先ず初めに叩き込まれたことによって、自分の立ち位置がはっきりしたといいます。日本にいる時は「病院側に立たないといけない。」という意識があったそうです。しかしイギリスでは、助産師はあくまでも女性の側に立っている職業であるということがはっきりしたととのことでした。

最後に淳子さんから日本の助産師さんへのメッセージです。

「自分の気持ちを大事に、仲間を増やして、楽しく皆んなで働けたらいいんじゃないかと感じています。」

これからの淳子さんのご活躍が楽しみになる勉強会となりました。


★いただいているご感想です。

イギリスの助産教育や助産現場のお話をお聞きして、改めて日本との違い(日本に欠けているもの)は、「女性中心」という考えや「人権の尊重」だと感じました。 女性の選択を尊重するというブレない軸があるからこそ、イギリスの助産師は高いプロフェッショナル意識を持って働けるのかなと感じました。理念・実践・エビデンスの連動、女性の選択を尊重する、自分の気持ちを大切に生きる…など、重要なことをたくさん学ばせていただきました。 最初に女性中心の哲学ありき・自分から実践・女性がこうしたいと言えるようサポートする・振り返りのこと・全てとても有意義でした。日本では「助産哲学」と「振り返り」をさらに強化していきたいと思います。


英国のウーマンセンタードケアのことが具体的にわかりました。指導者と学生が関わる際の言葉の使い方、姿勢がわかりました。
助産学生として、同じく助産学を海外で学んでいる先輩助産師さんのお話を伺うことができ、とても刺激をいただきました。受け身で授業を受けている私にとって、イギリスが積極性をとても重要視されているところが印象に残りました。お産の振り返りの重要性も学び、それは演習や実習を通して実践できることだと思ったので、実際に取り入れていきたいです。


自分の経験を語る時は注意すること、というお話が為になりました。
病院のパンフレットはあくまでも一例であって、生活をしていくのはお母さん自身なんだから、と心の中にストンと落ちました。

私が言ったところで先輩や医師の意見,判断は変わらないだろうなっと勝手に思ってしまったり、知識不足と思われたらどうしようなど自分自身の立場を考えてしまったりしているなと思いました。今一度お母さん達のためには、対象者のお母さんを尊重したケアになっているか?自分自身も思っている事を伝えていこうと思いました。


自分自身の意思を表現する事で最後のメッセージにもあったように同じ志を持った助産師とチームを作りやすく、その事がお母さん達へのためにもなる事を改めて感じられました。いろんな正解があって良い,対象者のお母さん自身の正解を一緒に模索できる助産師になりたいと感じました。

助産師は女性の代弁者である、という立ち位置、姿勢からお産の現場に入るというイギリス。
そして、あなたはどう思うの?という当然、サービスを受ける側に主体としての意思決定権があるという人権意識。
この2点が日本にはない。限りなく薄い。そう認識しています。

日本で、自然なお産として有数の葛飾日赤におられた淳子さんが淡々と語る今回の講座。わたしには、じわじわと大変興味深かったです。
「対等でないとアクシデントにつながる」。なかなか日本の医局制度、家父長制のようなピラミッド構造、パワーのシステムみたいな医療の前に、医師に対して勤務助産師はとても弱い立場におかれてると思います。この構造をどう変えていけるか。ほんとうに至難の技だとかんじています。
それでも、「仲間をつくること」。日々「じぶんのこころの声を聞く」だってそれは「まちがってない」から。淳子さんからのメッセージに、至難の技だけれど、ひかりをみてとりました。

生活環境全体で、お産の主体は女性である、という文化が根付いていると、女性も発言しやすいよな、と思いましたし、助産師教育の場でも終始、女性中心が謳われ、ケアに悩んだ時でも、自分の理由があればそれで良い、という形で進められている、ということが大きいと思いました。日本でも、お産に限らず、日々の生活の場で、そのような形を作っていくコトが私ができるコトの一つだと思いました。ありがとうございました。

◎登壇者プロフィール

ゲスト キャンベル淳子さん 

千葉県出身。1999年より都内で数年助産師として働いたのち、助産師のための代替医療を学ぶために2003年渡英。結婚を機に2009年よりロンドン在住。
NHS (National Health Service) バースセンターでの長男の出産を機に、イギリスで助産師資格を取得して臨床に戻る決意をする。

NHS 産褥病棟でNursery Nurseとして勤務。 
2019年、英国看護師資格を取得。HASU (hyper acute stroke unit) 勤務。
2020年、看護師のための助産学部(City University of London)に入学。
2022年6月、英国助産師資格取得、ロンドン市内で働き始める予定。