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第18回ママのねオンライン勉強会の開催報告と録画視聴のご案内 flower-icon

 11日(日)に同志社女子大学現代社会学部特任教授の中山まき子さんをゲストにお招きし、8月に出版された、
『子産みを支えた政策と助産者のケアする力~「母子健康センター事業」全58年の盛衰から~』
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8857.html の出版記念講演を開催しました。

10月10日まで録画をご覧になることができます。是非お申込ください。
https://rokuga-mamanone18.peatix.com/view


559ページもの大作を読み進めていくと、1958年から全国に700か所余り存在していた母子健康センターがなぜ衰退し、1990年以降2021年現在までに大量の子産み政策が発出されているものの、果たして子産み当事者を支える政策になっているのか、当時母子健康センターに従事していた助産師の豊かなライフヒストリーとともに、まるで謎解きのように書かれています。

冒頭この本を書かれた私的背景について、「女の人の技術職あるいは専門職の女の人の語りを残さないといけない。」といった中山さんの熱い思いをお話しくださいました。

「子産み・子育て」政策として実施された政策の事例を時系列でわかりやすく解説くださいました。

2023年4月に「子ども家庭庁」が開設される今、「本当に良質な子産み・子育て政策を真っ当にしていくチャンスだと思う。そのチャンスに何ができるのか。」まさに今とても重要な局面に来ていることがよくわかりました。

中山さんが本書を執筆された目的です。

そもそも「母子健康センター」とはどういうものか、どういった経緯で全国に増えて行ったかを非常にわかりやすく解説くださいました。

またこの本の最大の魅力である「助産師の語り」については、その場の空気が伝わってくるようなエピソードを交えて一部を紹介くださいました

そういった施設がなぜ閉鎖に至ったのか、存続した施設と閉鎖した施設では何がどう違っているのか、実に丁寧に調査されておられます。

特に助産師たちの語りから中山さんが導き出した共通点に、「待つ力と見極める力」を読み取ることができたとおっしゃったのには感銘を受けました。

著書の中で「当事者に寄り添う専門性の高いケアラーとの継続的な相互関係は、母子健康センター政策によってもたらされた副次的成果であった。」と結論付けておられます。

かつて助産師が専任として核になり、妊娠期から・出産・産後に至るまで一環したケアが行われていた施設が日本にあった。今後の子産み・子育て支援の場にこれをベースに、助産師だけでなく保健師や行政を組みこんでさらに上をいくものを作っていく必要があるとお話くださいました。また当事者にとってワンストップの切れ目ない支援を提供する為の、ケアマネジャー的存在の必要性についても語られました。

その後参加者から地域と勤務の助産師連携の問題や、助産師と保健師(行政)のすみ分けや連携、雇用形態(正規か非正規)の問題など核心を突くような問題定義を頂き、開催時間を押しての熱い議論が交わされました。

<参加者の感想です>(掲載可のもののみ)

・中山さんの聡明なお話し、最後のディスカッションを聞いていてもっと政治を知らなくてはいけないし、自分の仕事のことだけ考えている場合じゃない、と思いました。視野を広げていきます。

・私は今、丹波篠山市の子育て世代包括支援センターに所属し、My助産師による継続ケアをしています。高石市の母子健康センターへは、3年ほど前に市長を含め産科検討会メンバーで見学に行かせていただいたこともあり、とても興味深く母子健康センターの歴史の話を聞かせていただきました。
地域の保健師さんと助産師の関係や、行政に非正規で助産師が雇用されていること等、今まさに私が直面している問題にも話が及んで、どこの地域助産師も抱える問題だと知ることができました。助産師は女性が親となっていく過程を支援する専門職だということが社会に認識されていないことの表れだと思います。
「医療の範囲ではない、助産師の得意分野」をどうアピールしていくか。出産ケア政策会議の大きな課題だと感じました。
今回の勉強会はこれまでと違い、母子保健の歴史的なことや政策のことまで幅広い内容でとても勉強になりました。私の頭の中で消化不良の部分もありますが、録画で繰り返し聞いて知識を深めたいと思いました。
どうもありがとうございました。

・大変興味深いお話でした。なぜ母子センターが無くなってしまったのか、助産が出産と言われ医療ありきとなってしまったこと、地域助産師と勤務助産師の連携の必要性などなど、今後の課題が明らかにりました。
貴重な勉強会、ありがとうございました。

◎登壇者プロフィール

ゲスト 中山まき子さん(同志社女子大学現代社会学部特任教授)



ゲスト 中山まき子さん 


 長野県佐久地方にて、三姉妹の三女として、自宅奥座敷で助産婦さんケアで産まれる。

「また女!、おまえが元気になったらお父さんに手紙でも書きなさい」と、千葉県に単身赴任している父への連絡についての祖母の弁。母は助産婦さんが胎盤を丁寧に、丁寧に点検していた様子を後に再々話して聞かせてくれた。

 30歳を過ぎてお茶の水女子大学児童学科に編入学。生涯の恩師・原ひろ子先生の「人間学」授業で「加藤シズエの生涯」を聴く。1994年の国際人口開発会議(カイロ会議)に参加し、研究領域を「Sexual&Reproductive Health/Rights(性と生殖に関する健康と権利)を基本とし、今日に至る。

 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター教務補佐・目白学園女子教育研究所研究員を経て、鳴門教育大学助教授、同志社女子大学教授。現在、同志社女子大学特任教授。